収益認識会計基準④-契約資産・契約負債・変動対価・返金債務-

これまで①~③で収益認識会計基準をみてきましたが、今回は最後にその他の論点についてみていければと思います。

契約資産

契約資産とは、企業が顧客から受け取る対価に対する企業の権利のことをさし、但し、顧客との契約から生じた債権を除きます。

顧客との契約から生じた債権とは、企業が顧客から受け取る対価に対する企業の権利のうち無条件のもの、すなわち対価に対する法的な請求権をいうとされています。

対価に対する権利とは、無条件のものと無条件ではないものがあり、無条件のものは顧客との契約から生じた債権を指し、売掛金・工事引渡し済の完成工事未収入金などを指します。無条件ではないものを契約資産と呼び、工事引渡し前の完成工事未収入金などを指します。

例えば、商品を引き渡す前の段階で、販売する契約だけを結んだ場合、その段階で契約資産 / 売上の仕訳を行います。

そして、商品が引渡されたら売掛金 / 契約資産の仕訳を行い、売掛金 / 売上の残高になるという訳です。

契約負債

契約負債とは、商品等を顧客に引き渡す前に、企業が顧客から対価を受け取ったもの又は対価を受け取る期限が到来しているものをいう、とされています。

従来でいう前受金や未成工事受入金のことで、こちらはあくまでも概念としての話で、仕訳で契約負債という科目を用いる必要はありません。前受金や未成工事受入金の性質を契約負債という概念で説明したという程度のものです。

変動対価

顧客に販売した商品等の対価のうち、販売後に変動可能性のある部分を変動対価といいます。対価のうちに変動対価が含まれる場合には、変動対価の見積額を考慮して、収益の額を計上します。但し、変動対価を考慮するのは、その契約がある場合に限ります。

変動対価(売上の増減)の例としては、売上値引、売上割戻(リベート)、売上割引などがあたります。

返金負債

変動対価が将来の返金となる場合には、その変動対価の見積額を売上から控除し、返金対価として計上します。

対価の一部に返金が見込まれる場合の売上計上の処理としては、以下のようになります。返金が20見込まれるときは、返金負債を20計上します。

現金預金100 / 売上 80・返金負債20

なお、変動対価が見積不能な場合、割引額はそのまま売掛金から売上高直接減額する従来通りの処理で大丈夫です。

返品権付きの商品販売

出版業界や製薬業界等では書籍や薬品を小売店等へ販売した後、小売店等で一定期間売れ残った製品は無条件で返品できるといった取引慣行があります。そういった場合には、販売会社は、販売時に将来の売上返品の額を見積り、これを売上高から控除するという処理を行う必要があります。

例として以下のような仕訳になります。また、返品がある場合も想定します。

現金預金 100 / 売上 80・返金負債20

返品資産 16 / 仕入 16

返品される分に原価率をかけて、返品を見込む分は原価から外しておくことで、売上にも原価にも計上しないという形にします。

重要な金融要素の扱い

その他の論点として、取引価格に重要な金融要素(金利)が含まれている場合には、割引計算するなどして、現金販売価格を収益として認識するという取扱いがあります。こちらは従来と同様の扱いですので従来通りの形で覚えておけば問題ございません。

消費税等の扱い

収益に係る消費税等は、自己のためではなく第三者のために回収する額であるため、取引価格には含まれないこととされます。したがって、消費税等の処理は税抜処理しか認められなくなる形となります。

今回は最後に収益認識会計基準のその他の論点をまとめてみました。是非こういった取引実務がある会社ではよく検討していければと思います。