差押換の請求とは

国税の徴収では差押換の請求を行うことができます。

今回は差押換の請求の趣旨からその手続の内容まで解説していきたいと思います。具体的には、以下に番号を振ってそれぞれの概要についてを記載しています。

まず、国税徴収法の条文としては以下のようなものとなっております。

(第三者の権利の目的となつている財産の差押換)

第五十条 質権、抵当権、先取特権(第十九条第一項各号(不動産保存の先取特権等)又は第二十条第一項各号(不動産賃貸の先取特権等)に掲げる先取特権に限る。この項を除き、以下同じ。)、留置権、賃借権その他第三者の権利(これらの先取特権以外の先取特権を除く。以下同じ。)の目的となつている財産が差し押えられた場合には、その第三者は、税務署長に対し、滞納者が他に換価の容易な財産で他の第三者の権利の目的となつていないものを有し、かつ、その財産によりその滞納者の国税の全額を徴収することができることを理由として、その財産の公売公告の日(随意契約による売却をする場合には、その売却の日)までに、その差押換を請求することができる。

 税務署長は、前項の請求があつた場合において、その請求を相当と認めるときは、その差押換をしなければならないものとし、その請求を相当と認めないときは、その旨をその第三者に通知しなければならない。

 前項の通知があつた場合において、その通知を受けた第三者が、その通知を受けた日から起算して七日を経過した日までに、第一項の規定により差し押えるべきことを請求した財産の換価をすべきことを申し立てたときは、その財産が換価の著しく困難なものであり、又は他の第三者の権利の目的となつているものであるときを除き、これを差し押え、かつ、換価に付した後でなければ、同項に規定する第三者の権利の目的となつている財産を換価することができない。

 税務署長は、前項の場合において、同項の申立があつた日から二月以内にその申立に係る財産を差し押え、かつ、換価に付さないときは、第一項に規定する第三者の権利の目的となつている財産の差押を解除しなければならない。ただし、国税に関する法律の規定で換価をすることができないこととするものの適用があるときは、この限りでない。

 第二項又は前項の差押は、国税に関する法律の規定で新たに滞納処分の執行をすることができないこととするものにかかわらず、することができる。

ここから具体的に上記内容をかみ砕いて解説していきます。

1. 第三者の権利の尊重

徴収職員は、滞納者(譲渡担保権者を含む。)の財産を差し押さえるに当たっては、滞納処分の執行に支障がない限り、その財産につき第三者が有する権利を害さないように努めなければならない。

2. 差押換の請求

次のすべての要件に該当するときは、その第三者は、税務署長に対し、その財産の公売公告の日(随意契約による売却をする場合には、その売却の日)までにその差押換を請求することができる。

(1)賃借権の目的となっている財産が差し押さえられたこと。

(2)滞納者が他に換価の容易な財産で他の第三者の権利の目的となっていないものを有しており、かつ、その財産によりその滞納者の国税の全額を徴収することができること。

例としては、第三者が、差し押さえられた土地に対して賃借権を有している場合、滞納者の他に上記のような財産を持っている場合、第三者である賃借人が差押換えの請求ができます。

3. 請求があった場合の処理

税務署長は差押換の請求があった場合において、その請求を相当と認めるときは、その差押換をしなければならないものとし、その請求を相当と認めないときは、その旨をその第三者に通知しなければならない。

4. 換価の申立

差押換の請求を相当と認めない旨の通知を受けた第三者は、その通知を受けた日から起算して7日を経過した日までに、上記により差押換を請求した財産の換価をすべきことを申し立てすることができる。

5. 換価の制限

上記の換価の申立があった場合には、差押換を請求した財産が換価の著しく困難なものであり、又は他の第三者の権利の目的となっているものであるときを除き、これを差し押さえ、かつ換価に付した後でなければ、当初差し押さえた第三者の権利の目的となっている財産を換価することはできない。

6. 差押えの解除

税務署長は、上記の場合において、その換価の申立があった日から2月以内にその申立に係る財産を差し押さえ、かつ、換価に付さないときは、原則として当初差し押さえた第三者の権利の目的となっている財産の差押えを解除しなければならない。

7. 滞納処分の制限との関係

差押換又は換価の申立による新たな差押えは、国税に関する法律の規定で新たに滞納処分の執行をすることができないこととするものにかかわらず、することができる。

上記のような流れで差押換の請求はできる形となります。

もし賃借権を設定している土地などが差し押さえられている場合には請求を検討してみましょう。