収益認識会計基準③

収益認識会計基準について、これまでステップ1~4まで解説してきました。

今回は最後であり、最も重要性の高いステップ5の履行義務の充足による収益の認識を解説していきます。

35. 企業は約束した財又はサービス(本会計基準において、顧客との契約の対象となる財又はサービスについて、以下「資産」と記載することもある。)を顧客に移転することにより履行義務を充足した時に又は充足するにつれて、収益を認識する。資産が移転するのは、顧客が当該資産に対する支払を獲得した時又は獲得するにつれてである。

また、支配とは具体的になんなのかについても記載がされております。

37.資産に対する支配とは、当該資産の使用を指図し、当該資産からの残りの便益のほとんどすべてを享受する能力という。

資産が顧客に移転=履行義務の充足です。

履行義務がいつ充足されるのか、一時点か一定の期間かの問題ですが、いずれかに該当するかを判定する順序は、まず一定期間にわたる履行義務に該当するのかを判定し、次に一定期間にわたる履行義務に該当しなければ一時点の履行義務に該当すると判定します。

(一定の期間にわたり充足される履行義務)

38.次の1~3の要件のいずれかを満たす場合、資産に対する支配を顧客に一定の期間にわたり移転することにより、一定の期間にわたり履行義務を充足し収益を認識する

  1. 企業が顧客との契約における義務を履行するにつれて、顧客が便益を享受すること(一年間毎日サービスを提供するなど)
  2. 企業が顧客との契約における義務を履行することにより、資産が生じる又は資産の価値が増加し、当該資産が生じる又は当該資産の価値が増加するにつれて、顧客が当該資産を支配すること(工事を行うなど)
  3. 次の要件のいずれも満たすこと
    1. 企業が顧客との契約における義務を履行することにより、別の用途に転用することができない資産が生じること(特注機械装置の製作を受注など)
    2. 企業が顧客との契約における義務の履行を完了した部分について、対価を収受する強制力のある権利を有していること

逆に(一時点で充足される履行義務)は以下のようになっています。

39.前項1~3の要件のいずれも満たさず、履行義務が一定の期間にわたり充足されるものではない場合には、一時点で充足される履行義務として、資産に対する支配を顧客に移転することにより当該履行義務が充足される時に、収益を認識する。

収益の額の算定

次に収益額の算定について、過去とのおさらいになりますが、下記のような形で定められておりますので確認しておきましょう。

46.履行義務を充足した時に又は充足するにつれて、取引価格のうち、当該履行義務に配分した額について収益を認識する。

出荷基準等の取扱い

最後に、出荷基準等の取扱いは、収益認識会計基準適用指針に以下のように定められています。

(出荷基準等の取扱い)

98.商品又は製品の国内の販売において、出荷時から当該商品又は製品の支配が顧客に移転される時(例えば顧客による研修時)までの期間が通常の期間である場合には、出荷時から当該商品又は製品の支払が顧客に移転されるまでの間の一時点(例えば、出荷時や着荷時)に収益を認識することができる。商品又は製品の出荷時から当該商品又は製品の支配が顧客に移転される時までの期間が通常の期間である場合とは、当該期間が国内における出荷及び配送に要する日数に照らして取引慣行ごとに合理的と考えられる日数である場合をいう。

上場会社等で適用できなくなる収益認識の方法

大企業以外は収益認識会計基準は適用しなくても大丈夫ではあります。最後に上場会社等の大企業では適用できなくなる収益認識の方法をおさらいしていきましょう。

上場会社等が「収益認識会計基準」を適用した場合の、従来との相違点は以下のようなものになります。

  1. 原則として「出荷基準」は適用不可
  2. 委託販売において「仕切精算書到来日基準」は適用不可
  3. 割賦販売において「割賦基準」は適用不可
  4. 工事契約は、「収益認識会計基準」における「一定の期間にわたり充足される履行義務」に該当すれば「工事進行基準」と同様の処理を行います。

今回の収益認識会計基準は適用される企業への影響が大きいのでぜひこの機会にしっかり理解しておきましょう。