企業会計原則の中で前回は一般原則と、その一般原則の中での真実性の原則を解説しました。
今回は第2の原則となる正規の簿記の原則を解説します。
前回の解説はこちらをご参照ください。
正規の簿記の原則とは
正規の簿記の原則とはいかなる要請をしている原則でしょうか。
正規の簿記の原則は、すべての取引について、正確な会計処理を行い、正確な会計帳簿を作成することを要請するとともに、それに基づいた誘導法による財務諸表の作成を要請しています。
正規の簿記の原則では、上記のように大きく3つの点が要請されています。「正確な会計処理を行う」、「正確な会計時帳簿を作成する」、「誘導法により財務諸表を作成する」の3点をしっかりおさえることが重要です。
正確な会計帳簿とは
正規の簿記の原則では「正確な会計帳簿」の作成を求められていますが、具体的な正確な会計帳簿の要件は以下の3つとされています。
- 網羅性:会計帳簿に記録すべき取引を、網羅的にすべて記録すること
- 検証可能性:記録すべき取引を検証可能な客観的な証拠に基づいて会計帳簿を記録すること
- 秩序性:記録すべき取引を一定の法則に従って秩序正しく会計帳簿に記録すること
資本取引・損益取引区別の原則とは
次に3つ目の一般原則である資本取引・損益取引区別の原則を観ていきましょう。資本取引・損益取引区別の原則では以下の2つが要請されています。
- 資本取引と損益取引の区別
- 資本剰余金と利益剰余金の混同禁止
資本取引と損益取引の区別が求められている理由は以下のようなものとなっています。
適正な期間損益計算を行うためである。なぜなら、利益の金額は、損益取引から生じた資本取引の増加分だけに限定されるべきであり、資本取引による資本の増加分を利益に混入させると適正な期間損益計算が阻害されるからである。
適正な期間損益計算は、投資家が重視する収益力の認識に重要であり、その適正な期間損益計算を適切に行うため、損益取引と資本取引を区別するように求められているという訳です。
最後に資本剰余金と利益剰余金の混同禁止が要請されている理由をみてみましょう。以下の2つの観点から要請されています。
- 資本剰余金は維持拘束性を特質とし、利益剰余金は分配可能性を特質とする。したがって、両者を混同すると、維持すべき資本が侵食される危険性があるため、両者を混同してはならない。
- 資本剰余金は資本取引を源泉とし、利益剰余金は損益取引を源泉とする。資本を源泉によって区別することで投資家の意思決定に役立つ情報となるため、両者を混同してはならない。
上記のようにまずは利害調整の観点で、資本剰余金は維持拘束性するべきものであり、利益剰余金は分配い可能なものであるから、債権者保護及び株主と債権者の利害調整を図る観点から、両者を混同してはならないとされています。
次に、2点目は情報提供の観点で、投資家は経済的意思決定のために剰余金をその発生源泉別に区分した情報を得たいと考えるため、投資家の情報要求に応えるために要請されています。
いかがでしたでしょうか。両方とも企業会計原則の一般原則の中で重要な原則なのでぜひその目的や要請の背景とともに理解してください。