【元不動産クラファン責任者解説】不特法の許可を取って不動産クラウドファンディングの始める方法

  1. 不動産特定共同事業の前の貸付型クラウドファンディング-ソーシャルレンディング-
  2. 不動産クラウドファンディングとは-不動産特定共同事業法(不特法)-
  3. 不特法に基づくクラウドファンディングの事業者と必要許認可
  4. 不特法の第1号許可を得るための取得要件とは

1. 不動産特定共同事業の前の貸付型クラウドファンディング-ソーシャルレンディング-

不動産クラウドファンディングとは、という所をまず確認出来ればと思います。

投資商品としてのクラウドファンディングはそもそもは貸金業+金融商品取引業の許認可の組み合わせでスタートしました。

最初のソーシャルレンディングのサービスはmaneoです。maneo株式会社(貸金業登録)とmaneoマーケット株式会社(金融商品取引業者)がペアで、maneoマーケットとしてソーシャルレンディングのプラットフォームを提供して、現在は行政処分等で揺れてはいますが、業界を長らくリードしてきました。

当時は貸付型でしか投資商品としてのクラウドファンディングが出来ない一方で、安定した利回りを出しやすい投資対象は不動産であり、maneoなどを含めて、不動産取得用の資金を不動産業を営む業者に貸し付けて、その貸付金の元本と利息を小口出資している投資家に分配するソーシャルレンディングの商品が多数組成されました。

一方で当時はソーシャルレンディングでは匿名化・複数化の金融庁の方針があり、貸付先の情報や、貸付金に基づいて実際に取得する不動産の情報が全く開示されず、みんなのクレジット、ラッキーバンク、maneoなど、相次いで虚偽表示や資金の不正利用などで行政指導がなされました。

その流れと並行して現れて伸びてきていたのが今回お話する不動産特定共同事業法に基づくクラウドファンディングです。

2. 不動産クラウドファンディングとは-不動産特定共同事業法(不特法)-

不動産特定共同事業法に基づくクラウドファンディングはTATERU(当時インベスターズクラウド)が2016年から始めました。

ソーシャルレンディングとの違いは、大きく2つで、1つは、投資を募る事業者と実際に不動産を取得・運用する事業者が一致すること、もう1つは投資先の不動産の情報が開示されることでした。。

不動産特定共同事業法に基づいて行われるクラウドファンディングは1号許可という、自らの会社が営業者となって匿名組合を組成し、その匿名組合が取得する不動産や不動産の運用方法・収益見通しを記載した上で、出資を募ります。

結果として、事業を実際に行う会社は、出資を募集する不動産会社であり、その情報は外部からも確認可能です。また、不特法では許可を取得するのに事業者は過去3期分の監査法人から監査証明を取得した財務諸表の開示も必要で、事業者も特定可能、財務状況も確認出来、また、取得する不動産の建物や土地の情報がわかるので、投資資金と、それに基づいて取得される不動産の価値が釣り合っているかも投資家サイドで確認出来ます。

この優位性があり、TATERU fundingは当時のソーシャルレンディングと比較して利回りは低めで、かつその時には電子取引が出来なかったので契約書を郵送したりと手間もかかりましたが活況でした。

不動産特定共同事業法に基づくクラウドファンディングはこれ以降も参入が少しずつ続いていますが、この営業者と取得する不動産に関する情報の透明性から、元本の毀損はまだ一件も発生していません。また、集めた資金で取得する不動産の情報が開示されているので、運用開始時に物件を取得したかどうかを登記簿から確認することもでき、貸付型のソーシャルレンディングで一時頻発していた資金の不正利用などは発生することがほぼ無いと言えます。

3. 不特法に基づくクラウドファンディングの事業者と必要許認可

不動産特定共同事業法(不特法)に基づくクラウドファンディングをやっている事業者を見て、必要な許認可を見ていきたいと思います。

不動産特定共同事業の許可を得ている業者一覧は国土交通省のページで公表されています。

https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/content/001304924.pdf

有名所としてTATERU funding、FANTAS funding、CREALなどの運営会社は、全て不動産特定共同事業法の第1号許可と、電子取引業務の許可を持っていることが分かります。

この二つがあれば、不動産クラウドファンディングを始めることが出来ます。

4. 不特法の第1号許可を得るための取得要件とは

不特法は1号~4号までそれぞれ異なる出資の募集が出来る許認可があるのですが、不動産クラウドファンディングで用いられているのは1号のみになっているので、今回は1号許可を取るための条件を記載出来ればと思います。

複数の項目で要件があるので項目別に満たさなければならない要件を見ていきましょう。

①財務要件

まずは過去3期分の監査証明取得済の決算書を用意する必要があり、その上で会社の財務について下記の事項を審査されます。

a. 資本金が1億円以上

1号許可を取るには資本金が1億円以上必要です。参考までに1~4号の許可に必要な会社の出資金は下記のようになっています。

第1号事業者1億円
第2号事業者 1,000万円
第3号事業者 5,000万円 
第4号事業者 1,000万円

b. 直近の財務諸表において赤字になっていないこと

直近が黒字じゃないから必ず許可が不可という訳ではないですが、原則論として黒字は前提です。

c. 純資産額が許可基準である資本金又は出資の額の100分の90に相当する額に満たない

分かりにくいですね(笑)。非常に乱暴に言っちゃうと、許可に必要な資本金が1億円なので、資本金が1億円の場合、純資産の額が9,000万円超えてたら問題無いということです。なぜこんな規定があるかというと、資本金が1億円たとえばあったとしても、利益剰余金がマイナスになっていて、純資産が大きく毀損している事業者が出資を募って倒産するようなケースを避けるためですね。

②人的要件-業務管理者の設置-

不特法の許可を得るには、宅地建物取引士であり、かつ以下の何れかの資格を持つ「業務管理者」の設置が必要です。なお、業務管理者が宅地建物取引士があることが前提条件であるのと同様に、会社も宅建業者である必要があります。

a. 不動産証券化協会認定マスター

b. ビル経営管理士

c. 不動産コンサルティングマスター

d. 不動産特定共同事業の業務に関し、3年以上の実務経験を有する者

如何でしたでしょうか。資本金1億円を超えていて、過去3期分の監査証明取得済の黒字の宅建業者が不特法に基づいたクラウドファンディングを行うため、不特法のクラウドファンディングはトラブルが今の所起きていないというのもこの一連の許可要件で分かると思います。

不動産クラウドファンディングは2017年から電子取引の許可が整備され、また小規模という、許可ではなく登録で要件がもっと緩やかになったなったものも施行されましたので、是非、不動産クラウドファンディングの許認可にも着目して投資したり取得を目指してみてほしいと思います。