下請法に関するコンプライアンス研修資料でも記載しておりますが、資本金が1千万円を超える会社は下請法における親事業者に該当する可能性があります。
下図は公正取引委員会の出している親事業者の定義に関するものです。
資本金額が例えば2千万円の会社であれば、1千万円以下の個人若しくは法人に業務を委託したり、請負契約を結んだり、物品の発注や納品を行う場合には下請法上の親事業者の義務に則った書面の交付などを遵守する必要があります。
解説資料としてや、関係者の説明資料としては、下記の記事にパワーポイント形式で下請法についてまとめたファイルも添付しておりますのでそちらも是非ご確認下さい。
さて、下請法で一つ目の大きな問題が3条書面(業務委託発注書)の交付となります。
下記が公正取引委員会が示している親事業者の義務の4つでその一番上のものです。
なお、具体的には公正取引委員会からは以下の事項を3条書面としての発注書に記載することが求められています。参考程度で大丈夫です。
「親事業者は,発注に際して下記の具体的記載事項をすべて記載している書面(3条書面)を直ちに下請事業者に交付する義務があります。」
【3条書面に記載すべき具体的事項】
(1) 親事業者及び下請事業者の名称(番号,記号等による記載も可)
(2) 製造委託,修理委託,情報成果物作成委託又は役務提供委託をした日
(3) 下請事業者の給付の内容(委託の内容が分かるよう,明確に記載する。)
(4) 下請事業者の給付を受領する期日(役務提供委託の場合は,役務が提供される期日又は期間)
(5) 下請事業者の給付を受領する場所
(6) 下請事業者の給付の内容について検査をする場合は,検査を完了する期日
(7) 下請代金の額(具体的な金額を記載する必要があるが,算定方法による記載も可)
(8) 下請代金の支払期日
(9) 手形を交付する場合は,手形の金額(支払比率でも可)及び手形の満期
(10) 一括決済方式で支払う場合は,金融機関名,貸付け又は支払可能額,親事業者が下請代金債権相当額又は下請代金債務相当額を金融機関へ支払う期日
(11) 電子記録債権で支払う場合は,電子記録債権の額及び電子記録債権の満期日
(12) 原材料等を有償支給する場合は,品名,数量,対価,引渡しの期日,決済期日,決済方法
以上が公正取引委員会が記載している3条書面に記載するべき事項の一覧です。
https://www.jftc.go.jp/shitauke/shitaukegaiyo/oyagimu.html
具体的な書面としては下記のような書面をお勧めしています。
業務委託発注書としては、メールなどで送付するだけでも交付という最低限の要件は満たせておりますが、厳密に運用する必要のある会社、もしくは発注先との紛争を防止する意味では可能な限り書面で、かつ発注請書欄を設け、受託先が確認した旨の証憑を残すことが重要です。
流石に書面で双方押印して毎回発注書を出すのは実務的なハードルが高いので、著者は、クラウドサインやpaperlogicに代表されるような電子契約を用いて発注書も業務委託基本契約書と同じく送付して、相手方の署名を取り付けて3条書面(発注書)の交付の証憑としております。
電子契約のシステムを用いない場合は、認印などの印鑑を別途作成して、現場責任者が押印できる状態にして都度交付するということなども考えられます(大手のいいはんこやどっとこむなどで作成して認印を渡す)。
いいはんこやどっとこむ
↑通販で買えば数日で認印などは用意できます。
色々と面倒なところもありますが下請法は消費税の改正などのタイミングでも非常に注目されるので、是非適切な対応を普段からとれるように対応ご検討下さい。