IPOによるエグジットを考えているスタートアップやベンチャー企業において、ベンチャーキャピタルからの資金調達の際に、基本は何らかの条件を提示されることが多いと思います。
取締役会へのオブザーバーの派遣のようなものから定期的な業績報告のようにより簡単なものまで。
その中で、優先株式での出資を特にミドルからレイターのステージで求められることがあります。
その場合、上場までどのような資本の動きをするのかについて、直近で9月に上場予定のChatwork株式会社の事例を基に見ていきたいと思います。
Chatwork株式会社(4448):A種・B種優先株式
会社・IPO概要
創業年 | 2000年(法人設立は2004年) |
申請期 | 第16期(2019年12月期) |
上場日 | 2019年9月24日 |
想定時価総額 | 587.4億円 |
吸収金額 | 156.9億円 |
主幹事証券 | 大和証券 |
監査法人 | トーマツ |
なお、Chatworkの仮条件株価は当記事記載時点で確定していないので1,605円として想定時価総額や吸収金額を掲載しています。
言わずと知れたビジネスチャットを提供している会社です。
種類株を含む資金調達の状況は下記のようになっています。
Chatworkは2011年3月にビジネスチャットのChatworkをリリースしており、そのChatworkの開発などのために2015年と2016年にA種・B種優先株式を発行してベンチャーキャピタルから資金調達をしています。その資金を元手に2014年から2018年まで一貫して赤字を掘って先行投資を続けています。
以下が過去5年の決算で、Chatwork社はA種・B種の優先株式で合計18億円を調達して、十分な現金を常に確保しながら無借金で事業拡大のための先行投資を続けてきたのがわかります。
当時の業績状況などから、少なくとも先々数年は赤字前提での事業計画のもとで18億円の資金をベンチャーキャピタルから調達するにあたって、残余財産の優先分配などを万一の保険のために設定する等があったのではないかと推察します。
最終的には東証から承認が正式におりる8月の前の段階の5月に上場の目処がたって、優先株式を買い戻し、普通株式を同数割り当てた上で、償却しています。基本的に極稀な例を除いて種類株式を抱えて上場することはないのでこういった形で最後に種類株式を普通株式に転換してしまってIPOに臨むことになるのがベンチャー企業での優先株式による資金調達になります。