国税は納期限までに金銭で納付するのが原則ですが、災害や病気、事業の休廃業など、納税者の個別の事情によってどうしても納付が困難な場合があります 。このような事態を救済するために設けられているのが「納税の猶予」制度です 。
今回は、国税通則法第46条に定められている納税の猶予の3つのパターンについて、その要件や期間、効果を詳しく解説します。
目次
💡 この記事の結論(まとめ)
- 納税の猶予とは: 災害や経済的困難などの理由がある場合に、税務署長が一定期間、納税を待ってくれる制度 。
- 3つのパターン: ①災害による猶予、②災害等(病気・廃業等)に基づく猶予、③確定手続等の遅延による猶予 。
- 共通のメリット: 猶予期間中の滞納処分が制限され、延滞税の全部または一部が免除される 。
1. 納期限未到来の納税の猶予(通則法第46条第1項)
震災、風水害、火災などの災害により、納税者がその財産に「相当な損失」を受けた場合に適用されます 。
- 対象となる損失: 損失額が全財産のおおむね20%以上の場合を指します 。
- 対象国税: 損失を受けた日以後1年以内に納付すべき国税で、災害のやんだ日以前に納税義務が成立したもの 。
- 申請期限: 災害のやんだ日の翌日から起算して2ヶ月以内 。
- 特筆事項: このパターンでは、申請にあたり担保の提供は不要です 。
【法令引用:国税通則法第46条第1項】
税務署長は、国税の納税義務者が災害(震災、風水害、落雷、火災その他これらに類する災害をいう。以下この項、次項及び第72条第3項(徴収権の消滅時効)において同じ。)によりその財産につき相当な損失を受けた場合において、その国税を一時に納付することができないと認めるときは、その納付することができないと認められる金額を限度として、その申請に基づき、1年以内の期間を限り、その納税を猶予することができる。
2. 災害等に基づく納税の猶予(法第46条第2項)
「一般的な納税の猶予」とも呼ばれます 。災害だけでなく、病気や事業の廃止など、より幅広い事情をカバーしています 。
- 猶予該当事実:
- 財産が災害・盗難に遭った 。
- 納税者や生計を一にする親族が病気・負傷した 。
- 事業を休廃業し、または著しい損失を受けた 。
- 申請期限: 特に定めはなく、猶予該当事実が生じたときはいつでも提出可能です 。
- 担保の提供: 原則として猶予金額に相当する担保の提供が必要ですが、猶予額が100万円以下、または期間が3ヶ月以内の場合などは免除されます 。
3. 確定手続等が遅延した場合の納税の猶予(法第46条第3項)
納税者自身の事情ではなく、税額の確定手続が長引いたことによって、一時に多額の税金を払わなければならなくなった場合の猶予です 。
- 猶予該当事実: 本来の法定申告期限から1年を経過した後に納付すべき税額が確定したこと 。
- 対象国税: 申告期限から1年以上遅れて確定した更正決定等に係る税額など 。
- 猶予期間: 納期限の翌日から起算して1年以内 。
- 申請期限: その国税の納期限内 。
4. 納税の猶予の強力な効果
納税の猶予が認められると、納税者には大きなメリットがあります。
- 滞納処分の制限: 猶予期間中は、新たに差し押さえなどの滞納処分をすることができません 。
- 差押えの解除: すでに差し押さえられている財産がある場合、申請により解除できることがあります 。
- 延滞税の免除: 猶予期間に対応する延滞税は、その全額または半分が免除されます 。特に「災害・盗難・病気」を理由とする猶予(法46①、②一・二)の場合は、全額免除となります 。
5. 猶予の取消し(法第49条)
猶予が認められた後でも、以下のような場合には猶予が取り消されることがあります 。
- 分割納付の計画通りに納付しなかったとき 。
- 担保の変更等の求めに応じなかったとき 。
- 猶予された国税以外の国税を新たに滞納したとき 。
- 偽りその他不正な手段で猶予を受けたことが判明したとき 。
まとめ
納税の猶予は、納税者の生活や事業の継続を守るための大切な制度です。「手元にお金がないから放置する」のではなく、ご自身の事情が法第46条のどのパターンに当てはまるかを確認し、速やかに税務署へ相談・申請することが重要です。
猶予期間中は延滞税も大幅に軽減されるため、将来の再起に向けた大きな助けとなります。

