不動産クラウドファンディングのガイドラインという位置づけで、国土交通省が2019年4月に「不動産特定共同事業法の電子取引業務ガイドライン」を公表しました。
許認可の取得のための審査でも、実務でも極めて重要性の高い内容となっているこのガイドラインに沿って、第1回では「目的」から「商号」の章を、第2回では「電子情報処理組織の管理」、第3回では「適切な審査」、第4回では「クーリング・オフ」と「定期的な情報提供」、そして第5回では「重要事項の閲覧」を解説しました。
最終回となる今回は「分別管理の徹底及び金銭の預託」を解説していきます。
分別管理の徹底及び金銭の預託
11.分別管理の徹底及び金銭の預託(規則第49条第2項)
(1)第二号事業又は第四号事業に係る不動産特定共同事業者が電子取引業務を行う場合におい て、当該電子取引業務に関して事業参加者から金銭の預託を受けるときは、当該不動産特定共同事業者は、規則第49条第2項各号に定めるところにより、当該預託を受けた金銭と自己の固有財産とを分別して管理する必要がある。
(2)電子取引業務を行う第二号事業又は第四号事業に係る不動産特定共同事業者は、電子取引 業務に関して事業参加者から金銭の預託を受ける場合には、当該事業参加者との契約書等及び不動産特定共同事業者等との委託契約において、以下の事項を定めるものとする。
① 預託を受ける金銭の範囲
② 不動産特定共同事業者等への金銭の送金手続き
③ 事業参加者への金銭の支払手続き
④ 事業参加者への金銭の預託状況(入出金履歴及び残高)の通知方法(各事業参加者専用の画面で常時閲覧できる、定期的に残高報告書を交付する等)
(3)電子取引業務を行う第二号事業又は第四号事業に係る不動産特定共同事業者が事業参加者への分配金・償還金の預託を受けている場合には、少なくとも3ヶ月に一度は事業参加者に投資意思を確認するものとする。
不動産特定共同事業法の電子取引業務ガイドラインより(https://www.mlit.go.jp/common/001283702.pdf)
ガイドラインの最後になるのが「分別管理の徹底と金銭の預託」です。
まず預託を行うことの出来るのは、それぞれ一号と三号の媒介等の出来る二号と四号事業者に限られます。二号や四号事業の場合、自社で不動産を運用する訳では無く、他の不動産特定共同事業者の募集案件への出資を集めるためのプラットフォーマーとなる形になりますので、そのモデルの場合は預託を受けることが可能です。2020年2月時点では不動産特定共同事業法に基づく不動産投資型クラウドファンディングのプラットフォーマーは存在しませんが、将来的に出てくる際には預託を受けることが可能です。
留意点としてはまず預託を受けるには当然分別管理を徹底する必要があるため、入金を受け入れる銀行口座を別途用意する必要があります。
その他には預託を受けた後にも、少なくとも3ヶ月に一度は事業参加者に投資意思の確認を行えるようにシステムを考慮して構築する必要が出てくるので、その点でも留意が必要です。
また、今回は預託に関してガイドラインに沿って解説しておりますが、基本的には不動産特定共同事業法の場合、預託を受けておらず、事業者はどのような形で入金を受けるのかというと、例えば一号事業者の場合、自社名義で運用対象となる不動産物件を取得・運営するため、分別管理用の銀行口座を案件(ファンド)ごとに用意し、そこに投資家に入金してもらいます。
なので実際に不動産投資型クラウドファンディングを始めると結構な数の銀行口座を用意しておく必要があるので、もし事業として始めることを検討される場合は、余裕を持って早めに銀行口座開設の手続きをとっておくと安心です。
これで不動産特定共同事業法の電子取引業務ガイドラインの解説は以上になります。非常に具体的にやるべきことが定められているので、既に許認可を持っている事業者も、これから取得を目指している事業者も、ぜひ参考にしてみて下さい。