2017年12月1日に不動産特定共同事業法が改正され、電子取引が認められるようになりました。
この改正以降、従来は不動産特定共同事業法に基づいて小口不動産投資をする場合、書類の郵送により重要事項説明書類を送ったり、契約締結手続きをする必要があったのが、ネットでのやり取りで契約締結までの手続きを完結させられるようになっています。
電子取引業務のガイドラインとは
電子取引業務のガイドラインは、2019年4月15日に国土交通省より公表された、不動産特定共同事業法に基づいて電子取引業務を行う際の各種業務手続きや業務管理体制を明確化することを目的に作られた指針です。
執筆時現在(2020年2月)、この電子取引業務のガイドラインは、不動産特定共同事業法に基づくクラウドファンディングの事業運営する際は勿論のことですが、特にこれからクラウンドファンディング事業を始めるための許可を取得したい事業者にとって極めて重要な資料となっています。規制当局に提出する許可申請書類のうち、第6面という電子取引業務に関する業務の方法書の書類はガイドラインに沿って作成することが実質的に必須です。
今回は、この電子取引業務のガイドラインを複数回に分けて逐条解説していきたいと思います。まずは初回として、ガイドラインの「目的」から、サービスサイトのデザインの際に重要となる「商号」までを取り上げていきます。
なお、国土交通省が公表している電子取引業務ガイドラインの原本は下記リンクになりますので、公表資料をご覧になる場合はこちらをご参照下さい。
「目的」「適用対象」「適用時期」「総則」
1.目的
不動産特定共同事業法の一部を改正する法律(平成29年法律第46号)の施行により、不動産特定共同事業において、インターネット上での契約締結を可能とする電子取引業務に係る規定が整備された。本ガイドラインは、当該電子取引業務に係る規定において、電子取引業務を行う不動産特定共同事業者又は小規模不動産特定共同事業者(以下「電子取引業務を行う不動産特定共同事業者等」という。)が整備すべきとされる電子取引業務を適確に遂行するための業務管理体制の明確化等を行うことにより、電子取引業務の適正な運営の確保と投資家の利益の保護を図ることを目的とする。
不動産特定共同事業法の電子取引業務ガイドラインより(https://www.mlit.go.jp/common/001283702.pdf )
2.適用対象
本ガイドラインの適用対象は、電子取引業務を行う、又は行おうとする不動産特定共同事業者又は小規模不動産特定共同事業者(他者の不動産特定共同事業又は小規模不動産特定共同事業に係る商品について、自らのホームページ等で不動産特定共同事業契約の締結の申込みをさせる第二号事業又は第四号事業に係る不動産特定共同事業者、自己の不動産特定共同事業又は小規模不動産特定共同事業に係る商品について、自らのホームページ等で不動産特定共同事業契約の締結の申込みをさせる第一号事業に係る不動産特定共同事業者又は小規模第一号事業に係る小規模不動産特定共同事業者、及び同一の特例事業者から第四号事業に係る委託も受け電子取引業務を行う第三号事業に係る不動産特定共同事業者又は小規模第二号事業に係る小規模不動産特定共同事業者を含む。)とする。
不動産特定共同事業法の電子取引業務ガイドラインより(https://www.mlit.go.jp/common/001283702.pdf )
3.適用時期
本ガイドラインの適用時期は、平成31年4月15日とする。なお、平成31年4月15日に おいて現に電子取引業務を行っている不動産特定共同事業者又は小規模不動産特定共同事業者に 対する適用時期は平成31年7月15日とするが、不動産特定共同事業者又は小規模不動産特定 共同事業者が平成31年7月15日より前に新たに許可又は変更認可を取得して電子取引業務を 行う場合は、その許可又は変更認可を取得した日を適用時期とする。
不動産特定共同事業法の電子取引業務ガイドラインより(https://www.mlit.go.jp/common/001283702.pdf )
「目的」と、「適用対象」の記載から分かることは、このガイドラインは不動産特定共同事業のうち、電子取引の業務フローや体制に特化したガイドラインとして公表されたもので、小規模を含む不動産特定共同事業の1~4号全てを対象としています。
そして適用時期は2019年7月15日からで、現在不動産クラウンファンディングを運営している事業者は勿論のこと、これから不動産クラウンファンディングを始めたい事業者にとっては、当該ガイドラインに沿った運営が出来る体制が出来ていることの分かる許可申請書を作成する必要があります。
4.総則
本ガイドライン中「~必要がある」、「~ものとする」と記載されている規定については、それに従わない場合は、不動産特定共同事業法(平成6年法第77号。以下「法」という。)及びそ の関連法令の規定に違反するものと判断され得る。一方、本ガイドライン中「努める」、「適切である」、「望ましい」又は「期待される」と記載されている規定については、努力義務である。なお、本ガイドラインにおいて記載した具体例については、全ての事を網羅したものでなく、またこれに限定する趣旨で記載したものでもなく、個別ケースによって別途考慮すべき要素があり得るので注意を要する。
不動産特定共同事業法の電子取引業務ガイドラインより(https://www.mlit.go.jp/common/001283702.pdf )
「総則」については書いてあるままの記載なので詳細は割愛致します。
「商号等の表示」
5.商号等の表示(法第31条の2第 1 項及び第3項並びに規則第53条第1項)
電子取引業務を行う場合にあっては、不動産特定共同事業法施行規則(平成7年大蔵省・建設省令第2号。以下「規則」という。)第53条第1項に規定する事項が電子取引業務を行う不動産特定共同事業者等の運営するホームページ上の見やすい箇所に表示されている必要がある。なお、ホームページとは、電子取引業務を行う不動産特定共同事業者等の運営するウェッブサイト上の画面をいう。
(表示例)
・会社名
・不動産特定共同事業許可(許可番号 ○○県知事 第○○号)
・代表者の氏名、事務所ごとの業務管理者の氏名
・本店又は主たる事務所の所在地
・電話番号
・不動産特定共同事業の種別 第○号事業(電子取引業務を行う。)
また、電子取引業務を行う不動産特定共同事業者等は、法第31条の2第3項に規定するとおり、その業務管理者名簿を、自らのホームページ等において、電子取引業務を行う期間中及び電子取引業務に係る不動産特定共同事業又は小規模不動産特定共同事業(以下「不動産特定共同事 業等」という。)の期間中、投資家が閲覧できる状態に置く必要がある。なお、ホームページ等に表示する業務管理者名簿の様式は、規則第21条第3項に示す別記様式第9号によるものとする。
不動産特定共同事業法の電子取引業務ガイドラインより(https://www.mlit.go.jp/common/001283702.pdf )
最初から非常に重要な条項ですね。所謂、会社名(商号)や代表取締役の氏名など情報はウェブサイト(ガイドライン上は「ウェッブサイト」と記載)の見やすい箇所の表示されている必要のある旨が記載されています。そして、具体的に表示されているべき事項の例として挙げられているのが、「会社名」、「不動産特定共同事業許可(許可番号 ○○県知事 第○○号)」、「代表者の氏名」、「事務所ごとの業務管理者の氏名」、「本店又は主たる事務所の所在地」、「電話番号」、「不動産特定共同事業の種別 第○号事業(電子取引業務を行う。)」です。基本的には記載例に沿った書き方が求められますので、これに忠実にクラウンファンディングのサービスページも作ります。フッターに会社名等の要記載事項を書いていく形です。新たに不動産クラウンファンディング事業を始めたいという話をいただく事業者様には、電話番号をあまり記載したくないという事業者様もいらっしゃるのですが(お問い合わせは基本的にWEBやメールのみという会社は増えてますので)、このガイドラインに沿って、お問合わせ用電話番号はフッターに記載していただく形になります。
具体例として参照頂きたいのは株式会社AMBITIONが運営している「A Funding」です。キャプチャはサービスページのフッターですが、赤枠の記載箇所から分かる通り、商号から始まり、ガイドラインの記載例に沿って、網羅的に記載するべきと定められた事項を公表していることがわかります。
「A Funding」のトップページのリンクNew Frontierでは第2回以降でも引き続き、「不動産特定共同事業法の電子取引業務ガイドライン」の解説を通じて、不動産クラウンファンディングを始める際の重要事項を取り上げていきます。次回は重要なシステム(電子情報処理組織)を取り上げます。