財産調査(質問検査・捜索)の権限と手続きをわかりやすく解説

国税の滞納処分を行うにあたり、滞納者の財産状況を把握するための「財産調査」は非常に重要なプロセスです。徴収職員には、円滑に調査を進めるための強力な権限が与えられていますが、同時に人権に配慮した厳格なルールも定められています。

今回は、財産調査における「質問・検査(任意調査)」と「捜索(強制調査)」、そして調査を拒否した場合の「罰則」について詳しく解説します。

💡 この記事の結論(まとめ)

  • 財産調査の2つの柱: 質問・検査等の「任意調査」と、捜索の「強制調査」がある。
  • 任意調査の注意点: 「任意」とはいえ、正当な理由なく拒否や虚偽答弁をすると罰則(1年以下の懲役又は50万円以下の罰金)が科される 。
  • 捜索の厳格なルール: 強制力があるため、夜間の時間制限、立会人の同席、調書の作成など、厳格な手続きが定められている 。

1. 財産調査の基本「質問・検査・提示要求」(任意調査)

徴収職員は、滞納処分のために必要があるときは、滞納者やその財産を占有する第三者などに対して、以下の「任意調査」を行うことができます 。

  • 質問: 財産について口頭等で問いただすこと。
  • 検査: 帳簿書類その他の物件を確認すること。
  • 提示・提出の要求: 帳簿や物件を見せるよう、あるいは差し出すよう求めること。

徴収職員の滞納処分に関する調査に係る質問検査権(通則法第141条)

徴収職員は、滞納処分のため滞納者の財産を調査する必要があるときは、その必要と認められる範囲内において、次に掲げる者に質問し、その者の財産に関する帳簿書類(電磁的記録を含む。)その他の物件を検査し、又は当該物件(その写しを含む。)の提示若しくは提出を求めることができる。
一 滞納者
二 滞納者の財産を占有する第三者及びこれを占有していると認めるに足りる相当の理由がある第三者
三 滞納者に対し債権若しくは債務があつた、若しくはあると認めるに足りる相当の理由がある者又は滞納者から財産を取得したと認めるに足りる相当の理由がある者
四 滞納者が株主又は出資者である法人

提出物件の留置き(通則法第141条の2)

徴収職員は、滞納処分に関する調査について必要があるときは、当該調査において提出された物件を留め置くことができる。

⚠️ ポイント:黙秘権は適用されない

任意調査は、調査される側の拒否がある場合には物理的に強制することはできません。しかし、刑事責任を追及される際に適用される「黙秘権」は、この質問検査権には適用されないと解されています。そのため、正当な理由なく拒否をすると、後述する「罰則」の対象となります。

身分証明書の提示と権限の解釈

徴収職員はこれらの調査を行う際、身分を示す「徴収職員証票」を携帯し、請求があれば提示しなければなりません 。 また、これらの権限はあくまで滞納処分のためのものであり、「犯罪捜査のために認められたものと解してはならない」と法律で明記されています 。


2. 強制調査である「捜索」の権限とルール

質問・検査などの任意調査で目的が達せられない場合などには、強制調査である「捜索」が行われます。

捜索の権限及び方法(通則法第142条)

徴収職員は、滞納処分のため必要があるときは、滞納者の物又は住居その他の場所につき捜索することができる。
2 徴収職員は、滞納処分のため必要がある場合には、次の各号の一に該当するときに限り、第三者の物又は住居その他の場所につき捜索することができる。
一 滞納者の財産を所持する第三者がその引渡をしないとき。
二 滞納者の親族その他の特殊関係者が滞納者の財産を所持すると認めるに足りる相当の理由がある場合において、その引渡をしないとき。
3 徴収職員は、前二項の捜索に際し必要があるときは、滞納者若しくは第三者に戸若しくは金庫その他の容器の類を開かせ、又は自らこれらを開くため必要な処分をすることができる。

捜索の時間制限(通則法第143条)

捜索は、日没後から日出前まではすることができない。ただし、日没前に着手した捜索は、日没後まで継続することができる。
2 旅館、飲食店その他夜間でも公衆が出入することができる場所については、滞納処分の執行のためやむを得ない必要があると認めるに足りる相当の理由があるときは、前項本文の規定にかかわらず、日没後でも、公開した時間内は、捜索することができる。

捜索の立会人(通則法第144条)

徴収職員は、捜索をするときは、その捜索を受ける滞納者若しくは第三者又はその同居の親族若しくは使用人その他の従業者で相当のわきまえのあるものを立ち会わせなければならない。この場合において、これらの者が不在であるとき、又は立会いに応じないときは、成年に達した者二人以上又は地方公共団体の職員若しくは警察官を立ち会わせなければならない。

出入禁止(通則法第145条)

徴収職員は、捜索、差押又は差押財産の搬出をする場合において、これらの処分の執行のため支障があると認められるときは、これらの処分をする間は、次に掲げる者を除き、その場所に出入することを禁止することができる。
一 滞納者
二 差押に係る財産を保管する第三者及び第百四十二条第二項(第三者に対する捜索)の規定により捜索を受けた第三者
三 前二号に掲げる者の同居の親族
四 滞納者の国税に関する申告、申請その他の事項につき滞納者を代理する権限を有する者

捜索調書の作成(通則法第146条)

徴収職員は、捜索したときは、捜索調書を作成しなければならない。
2 徴収職員は、捜索調書を作成した場合には、その謄本を捜索を受けた滞納者又は第三者及びこれらの者以外の立会人があるときはその立会人に交付しなければならない。
3 前二項の規定は、第五十四条(差押調書)の規定により差押調書を作成する場合には、適用しない。この場合においては、差押調書の謄本を前項の第三者及び立会人に交付しなければならない。

身分証明書の提示等(通則法第147条)

徴収職員は、この款の規定により質問、検査、提示若しくは提出の要求若しくは捜索をする場合又は前条の職務を執行する場合には、その身分を示す証明書を携帯し、関係者の請求があつたときは、これを提示しなければならない。
2 この款の規定による質問、検査、提示若しくは提出の要求、物件の留置き又は捜索の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。

以下に条文内容を抜粋してまとめます。

① 捜索できる対象

  • 滞納者: 滞納処分のため必要があるときは、滞納者の物又は住居その他の場所を捜索することができます。
  • 第三者: 第三者の物や場所については、「滞納者の財産を所持する第三者がその引渡しをしないとき」などに限り、捜索することができるとされています。

② 捜索の時間制限

個人の生活の平穏を守るため、捜索には時間制限があります。

  • 原則: 日没後から日出前まではすることができません 。
  • 例外1(継続): ただし、日没前に着手した捜索は、日没後まで継続することができます 。
  • 例外2(夜間営業等): 旅館や飲食店など、夜間でも公衆が出入りできる場所については、公開した時間内であれば夜間でも捜索可能です。

③ 捜索の立会人

捜索を適正に行うため、以下の者を立ち会わせなければなりません 。

  1. 捜索を受ける滞納者・第三者、又はその同居の親族、使用人などで「相当のわきまえのあるもの」 。
  2. 上記の者が不在または立会いに応じないときは、成年に達した者2人以上、又は地方公共団体の職員若しくは警察官 。 ※立会人は、調査の公正を監視する立場であるため、税務署の職員以外が望ましいとされています。

④ 捜索調書の作成

捜索したときは、「捜索調書」を作成し、その謄本を捜索を受けた者や立会人に交付しなければなりません 。


3. 調査を円滑に進めるための「出入禁止」

徴収職員は、捜索や差押え、財産の搬出をする際、処分の執行に支障があると認めるときは、その処分をする間、その場所への出入りを禁止することができます。

ただし、以下の者は出入りを禁止することができません。

  • 滞納者
  • 差押え財産を保管する第三者、捜索を受けた第三者
  • 上記の者の同居の親族
  • 滞納者の国税に関する申告等につき、代理する権限を有する者(税理士・弁護士など)

4. 調査を拒否した場合の「罰則」と「両罰規定」

任意調査である「質問」や「検査」に対して、非協力的な態度をとった場合、厳しいペナルティが用意されています。

① 質問及び検査の拒否等の罰則

次のいずれかに該当する者は、「1年以下の懲役又は50万円以下の罰金」に処されます。

  1. 質問に対して答弁をせず、又は偽りの陳述をしたとき
  2. 検査を拒み、妨げ、若しくは忌避したとき
  3. 物件の提示・提出要求に対し、正当な理由がなく応じず、又は偽りの記載をした帳簿書類等を提示・提出したとき

② 両罰規定(法人が関わる場合)

法人の代表者や従業員が、その法人の業務等に関して上記の違反行為をした場合、その行為者(個人)が罰せられるだけでなく、その法人に対しても同様の罰金刑が科されます(両罰規定) 。法人ぐるみで違反行為をした場合、両方が責任を問われることになります。


いかがでしたでしょうか。財産調査は、任意調査と強制調査(捜索)の違い、それぞれの権限の範囲、そして立会人や時間制限といった細かな手続きのルールも重要となります。ぜひこの機会に理解して覚えるようにしましょう。