【意外と事業リスクになりうる】カルテル・トラスト・コンツェルンを解説

意外なことからかかわってきたりする独占禁止法についての基礎的な理解を深める意味で、言葉は知っていても中々具体的なイメージが湧きにくい、カルテル・トラスト・コンツェルンの解説と、具体的にどういった場面でかかわってくるのかの例を今回は説明していきたいと思います。

カルテル

カルテルは同業事業者同士が、事前に協定によって商品やサービスを供給する価格や、受注量、生産量などを調整することです。

本来、カルテルのない状態では、企業間競争が起き、各社は他社の商品やサービスをよりも、より質が高いものをより安く消費者に提供する企業努力を行います。その結果、消費者は各社の商品やサービスの質や価格を比較した上で、より良いものを選択することが出来ます。

一方で、カルテルが実施された場合、供給サイドの企業同士で競争することがなくなります。結果として価格上昇や品質低下を招き、消費者は不利益を被ることとなります。

例えば、直近では2019年7月に飲料缶カルテルに対して課徴金の処分が下されました。

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO46838190S9A700C1CC0000/

製缶大手の東洋製缶、北海製缶、ユニバーサル製缶、大和製缶の4社は、ビールなどの缶飲料に使用される缶容器の販売で、価格を同等にする価格カルテルを結んでいたということです。

この場合、缶容器を利用する側は、製缶業者同士での価格競争が起きないために高い仕入価格で缶容器を仕入れる必要が出てきます。

こういった事態を防ぐためにカルテルは禁止されています。

こうして見るとカルテルは明確な悪意のあるものが一般的かと思われますが、実は実務上、明確な悪意がなくても問題となることもあります。

同業他社をM&Aする場合や、同業他社と業務提携を行う場合などです。

同業他社をM&Aする場合、大会社同士のM&Aだと、検討段階に入ってから双方の会社のM&Aの決議を経て取引実行までかなりの時間を要します。その検討から実行期間の間、お互いの商品やサービスの供給価格が会社間で見えており、かつ将来的に合併や子会社化する場合、取引の実行までの期間、積極的に価格競争を行ったり、新規出店の立地が重複したりするのは本来得策ではありません。

然しながら、そこは将来の合併を見越してお互いの収益を毀損しないように話あったりすることはカルテルに該当する可能性があります。

そういったリスクを軽減する意味でも大企業間での同業他社同士でのM&Aは特に事業上の情報の取扱を厳重にする必要があったりします。

トラスト

市場を支配する目的で同業企業同士で合併などを行う際に問題となります。

市場全体の過半を超えるようなシェアを一社が持ってしまうと供給側が価格や供給量の決定権を握ることが可能となってくるからです。

近年ではGAFAを初めとしたIT業界の巨人に対して、市場での独占的地位を悪用しているとして適用されるケースが見られます。

コンツェルン

持株会社などをトップとして各社に出資を行い、独占価格を形成するために生産から販売までを統制する形態のグループです。

かつて戦前の財閥が問題となっていたことから日本では長らく禁止されていましたが、現在は持株会社も解禁され、出資形態としては良く見られる形となっています。

如何でしたでしょうか。意外とカルテルやトラストはM&Aなどを切っ掛けに、価格を支配したりする意図を持っていなくても問題となって対応を迫られたりしますし、そもそも営業担当や仕入担当の場合、同業他社の情報を意識して聞かないようにするといった努力が必要になったりします。

独占禁止法に引っかかる要件を良く理解して、特に市場シェアが大きい会社にいる場合は社内教育などの啓蒙活動も行っていきたいですね。