国税の徴収において、滞納があった場合に「最大で国税3ヶ月分」の担保設定を命じられることがあるのをご存じでしょうか? 今回は、納税義務が成立する前に、将来の徴収を確保するために行われる強力な保全措置「保全担保(国税徴収法第158条)」について、その要件や手続き、解除の条件までを詳しく解説します。
目次
💡 この記事の結論(まとめ)
- 保全担保とは: 納税義務の成立前に、将来の税収確保のためにあらかじめ担保の提供を命ずる制度 。
- 対象となる税目: 酒税、たばこ税、揮発油税などの「消費税等(消費税は除く)」。
- 最大のポイント: 命じられた担保を提供しない場合、納税者の財産に強制的に抵当権が設定される強力な効力を持つ。
1. 保全担保が求められる要件(成立要件)
税務署長は、次のすべてに該当する場合に、国税の担保として金額と期限を指定し、納税者に「担保の提供」を命ずることができます。
- 納税者が消費税等(※消費税を除く間接国税)を滞納したこと 。
- その後、その者に課すべきその国税の徴収を確保することができないと認められること 。
※対象となる国税(消費税等)の具体例 ここでいう消費税等には「消費税」自体は含まれません。具体的には、酒税、たばこ税、揮発油税、地方揮発油税、石油ガス税、石油石炭税などの「間接国税」が該当します。
担保を命ずる金額の限度(最大3ヶ月分)
むやみに高額な担保を要求されないよう、法律で上限が定められています。具体的には、次の①と②の「いずれか多い金額」が限度となります。
- ① その提供を命ずる月の「前月分」の当該国税の額の3倍に相当する金額
- ② その金額が前年における「その提供を命ずる月に対応する月分」及び「その後2月分」の国税の金額
2. 保全担保の提供命令の手続と期限
保全担保の提供命令は、次の3つの事項を記載した書面で行わなければなりません。
- 担保されるべき国税の税目および金額
- 提供すべき担保の種類
- 担保を提供すべき期限
指定される「期限」についてのルール
担保の提供を命ずる書面を発する日から起算して、「7日を経過した日以後の日」を期限として指定しなければなりません。ただし、納税者に繰上請求に該当する事実(強制換価手続の開始や法人の解散など)が生じたときは、この期限を繰り上げることができます。
3. 担保を提供しない場合の「抵当権の強制設定」
保全担保制度の最も強力な点は、指定された期限までに納税者が担保を提供しなかった場合のペナルティにあります 。
納税者が命令に従わない場合、税務署長は、その者の財産(抵当権の目的となるもの)につき、指定した金額を限度として抵当権を設定することを書面で通知することができます。
この通知が行われると、以下の強力な効力が発生します。
- 抵当権の「みなし設定」: 納税者に通知があったときは、その通知を受けた納税者は、自ら抵当権を設定したものとみなされます。
- 登記義務者の承諾は不要: 税務署長は、抵当権設定の登記を関係機関に嘱託しなければなりませんが、この際、登記義務者(納税者)の承諾書は不要です。通知が到達したことを証する書面を添付するだけで強制的に登記が行われます。
4. 担保の解除(法第158条第7項・第8項)
一度提供された保全担保(または設定された抵当権)は、どのような場合に解除されるのでしょうか。これには「義務的解除」と「裁量的解除」の2パターンがあります。
① 担保の解除を「すべき」場合(義務的解除)
担保の提供命令に係る国税の滞納がない期間が、継続して「3ヶ月」に達したときは、税務署長はその担保を解除しなければなりません。真面目に納税を続ければ、3ヶ月でペナルティ状態から解放されるということです。
② 担保の解除が「できる」場合(裁量的解除)
納税者の資力その他の事情の変化により、担保の提供等の必要がなくなったと認めるときは、税務署長は「直ちに」その解除をすることができます。
いかがでしたでしょうか。 保全担保は、申告納税方式が適用されない間接国税等において、将来の税収を取りっぱぐれないようにするための非常に強力な事前措置です 。「強制的な抵当権のみなし設定」や「解除までの3ヶ月ルール」など、重要なポイントを押さえておきましょう


